事業の特徴

事業の概要

 学生や若い人材が住民と協働しAIPコミュニティづくりに取り組む実践研修の場を、超高齢化の先行する名古屋市緑区鳴子地区に形成し、医・薬・看・リハビリ・工学の学部・研究科、大学病院が連携して、AIPの実現と質の向上を担う人材を養成します。卒前教育、初期・後期研修、大学院2コースを含む6つのプログラムを開設し、一貫した多職種連携教育を通じて、AIPに必要な地域診断、地域再活性化から、ICTによるチーム在宅医療・包括ケアシステムの構築に至る総合的な課題解決能力を持った総合診療医、コミュニティ・ヘルスケア指導者、ICT医工学の実践的リーダを育てます。地域にコミュニティ・ヘルスケア教育研究センターを置き、教育指導、疫学や医工連携研究の指導、住民との交流による啓発活動、地域の多職種連携在宅医療の促進のためのキャリア支援を行います。これにより各地に質の高いAIP社会を形成し、後継の育成に貢献する有能な人材を輩出します。

prj_fig08
地域と育む未来医療人「なごやかモデル」のフレームワークとオペレ-ション

事業の特徴

AIPコミュニティづくりを通じた実践研修

 「なごやかモデル」の特色は、AIPのための街づくりとそのための人材育成を、相互発展的に連動させることです。多職種協働とICTによって質の高いAIPのための保健・医療・福祉システムを構築する能力を育成するには、実際のコミュニティでシステムづくりを実践する研修が必須です。本プロジェクトでは、学生や若い医療人と共に、地域と大学の信頼関係を構築し、住民交流や健康に関する啓発活動、地域の多職種との連携による在宅医療研修、医療福祉人材資源の活性化(キャリア支援)のための顔の見える関係づくりなどを進めます。その過程の中で、AIPのための実践的な人材を育成し、その力でAIPのための街づくりをさらに推進します。

地域と育む未来医療人「なごやかモデル」プロジェクトの特徴

 本事業では、名古屋市立大学、名古屋学院大学、名古屋工業大学が、地域の特定非営利活動法人「たすけあい名古屋」と連携して以前からコミュニティ再生活動に着手していた名古屋市緑区の鳴子団地を中心とする鳴子地区を実践研修の場として、人材育成システムを構築します。

 鳴子団地では高齢化率が44.1%に達し、その約半数が独居世帯で、同様な状況が周辺の戸建て住宅地にも広がっています。自治組織などコミュニティの結び付きが希薄で、今後、介護の必要な高齢者の急増と、地域の活力の一層の低下が懸念されます。一方、住環境は良好で、交通の便も良く、団地の周囲には鳴子幼稚園、鳴子小学校、鳴子台中学校、鳴子保育園、長根台小学校があり、公園、緑地も十分に確保されています。コンパクトシティの構築条件が揃っていると言えます。

 鳴子地区は日本の課題の縮図的地区であり、この地区の問題解決は、名古屋市ひいては全国の問題解決につながるモデル地区として位置づけることができます。「なごやかモデル」では、鳴子地区をモデル地区として、住民および多職種間の連携によって質の高いAIPの実現を目指し、その過程を通じてAIPを他の地域にも水平展開できる医療人材を育成します。

名古屋市緑区鳴子地区  UR鳴子団地

鳴子団地の概要 (名古屋市緑区鳴子町1丁目)

AIPコミュニティの質を保証する研究とエビデンス発信能力の育成

 AIPを単なる高齢化対策に終わらせず、医学・医療の進歩に繋げるためには、AIPの質を向上する研究・開発が必要です。「なごやかモデル」ではその研究・開発を、総合診療医の重要な役割として位置づけます。

 本事業では、コミュニティ・ヘルスケア指導者養成コースにおいては、コミュニティを基盤とする老化抑制・介護予防の疫学・介入研究の他、在宅医療を基盤とする生体情報モニタリング、ロボット技術などの臨床応用に関する生体工学的研究、運動器症候群や認知症などの予知、早期発見のための指標や検査法に関する生理学、生化学、行動医学的研究と病態解明のための病理学的研究、アドバンスド・ケア・プラン、緩和終末期ケア、多職種連携医療の質の評価に関する学際的研究、介入研究等で得られるサンプルを用いた分子生物学的解析、生化学的・分析化学的解析研究など、多様な領域の研究を指導します。指導体制として、所属分野の指導責任者の他に、未来医療人材養成プロジェクト委員会学術企画部会、コミュニティ・ヘルスケア教育研究センター教員が指導にあたり、他学部、他大学、他機関との連携・共同研究も奨励します。

卒前卒後を一貫した多職種連携教育

 在宅医療、地域包括ケアには多職種協働が不可欠ですが、効果的な多職種チームワークにはリーダーシップのみでなく権威勾配を生じないチームマインドが重要です。本事業では、入学後早期から卒後研修、大学院コースに至るまで一貫した多職種連携教育を行い、チームワーク能力とチームマインド、多職種が協働するキャリア・イメージの育成を行います。

 また、医・薬・看・リハビリテーション学部のみでなく、工学部との連携を行います。医療・福祉ICT(情報通信技術)はAIPコミュニティの基盤要素であることから、医療人のICT活用能力と医工学者の医療・福祉マインドの育成が必要です。また、ICT医工学はAIPを目指す医学・医療の中心的な研究分野のひとつになります。そこで、「なごやかモデル」では、医工学を専攻する学生・研究者を医療研修チームに加えることで、医療と工学の双方向教育を誘導します。これによってICTによる問題解決能力の育成とともに、AIPのための医工連携研究を推進する人材やチームを養成します。