日本の高齢化率は世界のトップを走り続け、これから大都市圏を中心に高齢人口の急増期を迎えます。この未曾有の人口高齢化に直面する中で、大学には医療をはじめとする社会のパラダイムシフトを担う人材の養成が求められています。それはこれまで誰も経験したことのない状況であり、養成すべき人材にはパラダイムシフトの中で出会う様々な未知の課題を解決する能力が求められます。この未知の課題に対する対応能力を教育するという矛盾した要請に対し、教室や病院の中だけの教育に期待できる効果はわずかです。社会の発展や技術のイノベーションの歴史が示す通り、そのような人材の育成を可能にする唯一の方法は、学生と教員がともに現実のフィールドで問題解決にあたりつつ、実践と省察を積み重ねるような学習方法です。
この状況に対応して文部科学省より「未来医療研究人材養成拠点形成事業」が公募され、その一つとして、名古屋市立大学と名古屋学院大学および名古屋工業大学の連携による「地域と育む未来医療人『なごやかモデル』」が採択されました。「なごやかモデル」では、超高齢化の先行する名古屋市緑区鳴子地区をフィールドとし、学生や若い人材が住民と協働して、いつまでもその人らしく暮らせる社会づくり(エイジング・イン・プレイス、AIP)に取り組みます。そして、この実践活動を通じて、AIPの実現と質の向上を担う人材を養成します。
学生や若い人材に夢のある未来ビジョンを示し、そこで必要とされる能力の習得を支援することが大学の使命だと思います。日本の高齢化率がピークを迎える2060年とは、平成26年現在19歳の人が65歳を迎える年です。つまり、現在大学にいる学生たちの生涯の活躍の場は世界一の高齢社会であり、特に医療を目指す者は、その先頭に立って、多様な課題の解決にあたらなければなりません。一方、世界一の高齢社会であることは、日本が世界のイニシアチブをとることのできるかつてないチャンスです。これから日本が切り拓らき、実践していく新しい医療システムや医療技術を未来医療モデルとして、日本に追随して高齢化が進む国々に示すことが、日本の使命だと思います。「なごやかモデル」を通じ、地域と大学が一体となって、若者達に挑戦とやりがいに満ちた、未来の確かな手応えを実感させられる場が生まれることを願ってやみません。
平成26年1月
名古屋市立大学未来医療人材養成プロジェクト委員会
※「未来医療研究人材養成拠点形成事業」選定大学の申請書は文部科学省の次のURLに公表されています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/1338948.htm