高齢コミュニティへの学生参加のメリット
名古屋市立大学の医・薬・看学部では、「医療系学部連携チームによる地域参加型学習」として、医・薬・看の学生チームが、大学周辺から離島・山間地を含む24地域で活動する課題解決型学習を行っています。この学習の中で、学生チームが地域の高齢者と接し、協働で課題の解決にあたる機会が多くありました。このカリキュラムを通じて、確認されたメリットとして、次のようなものがあります。
- 高齢者とのコミュニケーション能力は重要な医療技能であり、医療系の学生にとって貴重な学習の機会となる
- 高齢者と学生とは、世代的に祖父母と孫のような良好な関係を作りやすく、普段、地域コミュニティへの参加の機会が少ない男性高齢者でも、学生からの協力の依頼には応じてもらいやすい
- 学生が地域のイベントなどの企画の求心力となることができる
- 複数の学部間の連携チームで活動することにより、学生チームと高齢者間、あるいはチーム内の学生間で、多様な観点から話し合う機会が生まれ、地域包括ケアに求められる多職種連携教育としての意義が大きい
鳴子地区での学生の活動
都市型のコミュニティでは、地方に比べて住民同士の関係が希薄で、住民間の互助が生まれにくく、独居者の孤立も生じやすいといわれています。高齢者の独居世帯の多い鳴子団地では、その傾向が強くコミュニティの大きな課題として挙げられています。そこで、「なごやかモデル」では、鳴子地区を中心に、人材育成プログラムおよび学生の課外活動として、地域の交流カフェやサロンへの学生の参加、高齢コミュニティでの学生の共生体験、学生による啓発・交流イベント、体操、合唱、演劇、陶芸教室などの文化活動などを、奨励し支援していきたいと思います。
また、「土曜サロン鳴子」、「鳴子きずなの会」、たすけあい名古屋の「おひさまカフェ」などを中心に協力をお願いし、地域の住民を中心とする組織の活動に、学生なればこそできる地域の課題解決に取り組みたいと思います。
学生と高齢者との多面的な交流
学生と高齢者とのコミュニケーションの機会として、以下の様な多面的な取り組みを継続的に行っていきたいと思います。
- 「高齢者との共生体験」
高齢化団地の住宅を借りて、学生のルームシェアにより1名あたり3か月程度の生活を行い、近隣の高齢者との日常活動を通じたふれ合いや交流を体験します。 - 「高齢者家庭支援体験」
受入れの承諾の得られた高齢者の家庭を、1チーム3名の学生が担当し、1年間を通じて、2週に1度程度の継続的家庭訪問を行います。生活上のニーズや人生に対する考えかたを把握し、イベント等の紹介、要請や必要性があれば、「なごやか暮らしの保健室」を通じて、住民互助組織や公的相談窓口等への連絡等の役割を努めます。 - 「地域リハビリテーション実習」
学生実習の一部として、教員の指導の下に健康増進教室、体操教室などのイベントを企画し、住民に参加を呼びかけます。 - 「健康・医療・介護のためのICT技術の紹介」
健康・医療・介護に関するイベントを開催し、最新の機器による身体機能や認知機能の評価、家庭で使える健康維持や医療・リハビリ・介護支援のための情報通信機器やロボットの紹介、使用体験教室などを行います。
「なごやか暮らしの保健室」の開設
コミュニティ・ヘルスケア教育研究センターに「なごやか暮らしの保健室」を開設します。「なごやか暮らしの保健室」では、そこを訪れる近隣住民に対して、保健師や住民同士による、健康に関する相談の場を提供します。そこに学生を参加させることで、住民とのふれあいを通じた、地域包括ケアシステムに関する実践的教育・研修を行います。また、「なごやか暮らしの保健室」では、健康・医療・介護に関する相談、健康の維持及び増進、疾病予防、介護に関する講習会、保健・医療・福祉に関する情報の収集及び提供などを行います。したがって、診療や介護保険制度又は医療保険制度による援助は行いません。また、公的相談窓口の機能を補うものではなく、必要に応じて公的相談窓口と住民とを繋ぐパイプ役となることを想定しています。